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2007年 08月 18日
<第2話> 海辺に立つ一軒の古い家。 昼になるとむんっとした空気が部屋の中にたまる。 この家には冷房がない。 それでも、時折部屋を吹き抜ける風に、心地よさを感じる。 まだ一歳に満たない赤ちゃんと、お母さんが部屋の中に見えた。 暦の上では立秋を過ぎたと言うのに、残暑はまだまだ続く。 赤ちゃんは、額いっぱいに汗を浮かべて、寝苦しそうによこたわっていた。 「本当に暑い」 お母さんはつぶやいた。 ふと目を向けると、うちわが転がっていた。 そっとひとあおぎしてみた。 べたべたとした潮風も、うちわの風と混じってさわやかな感じがした。 なんともやさしい、柔らかい風。 寝苦しそうな赤ちゃんのそばで、お母さんはうちわを仰いみた。 あかちゃんの額の汗は引き、気持良さそうに深い眠りへと落ちていった。 その様子を時計は遠くからほほえましく眺めていた。 時間は午後1時17分。 柔らかい波に引き寄せられ、時計は海へと流れていった。 <第2話終了>
by sunabi
| 2007-08-18 22:58
| 漂着時計の物語
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